2009年12月の記事一覧
古いボーカルジャズが、どちらかというと気だるく、ゆっくりと鳴っている。
クリスマスのオムニバスだ。
分かりやすく、"メリークリスマス"とか"サイレントナイト"とか唄っているものは良いのだが、言葉が解らない為、これのどこがクリスマスなんだろうと思ったりしている。
洋物だ。
早い時間の会話も一頻り。
今、ひとりにてポツンとカウンターの中。
火曜日は定休日。
本日は年末と祝日前夜な為、気紛れに営業を。
顧客のみの我が店。
もっと告知しておけば良かった。
暖房の空調の音が天井から降りてきている。
何分間隔かわからないが、冷蔵庫達が順番に、足元で唸りをあげる。
静かだと気になる。
只、吸って吐いてを思えば人間とそうも変わらないのかもとも思う。
付き合いが、長くなってきた。
頼むよダリアの機械部。
とか、声をかけてみたりもする。
コーラとタバコと小説でやり過ごす。
今、小説を読み終えこれを。
退屈に随分慣れた。
この退屈の間、僕は随分静かだなと思う。
暖房の音、いつもより抑えた洋物、時折外から聞こえるパーキングの出庫の音。
僕は只、その中静かに夜がもう少しだけ満ちるのを待っている。
次の満月は、まだ来ない。
あれは、何色というのが正しいのだろう。
いつも夕方はRでソフトブレンド。
真っ直ぐ仕事というのが辛くて、つい一息ついてしまう。
雑誌を読んだり、マスターと話したり。
やれやれと仕事に行く。
Rは僕の店があるパーキングから多分30歩もないくらいの所だ。
ハスムカイともいう。
一歩づつ、やれやれ、やれやれと歩く。
それが、ルーティンだ。
仕入れの後はRなのだが、今日はまず、狸小路でラーメンを食べた。
人により賛否両論な店なのだろう。
僕はその店が出来た時から行っている。
今日は久々。
いつも同じものを頼む。
20年くらいそうしている。
この間何店舗に増えたのだろう?
ほぼ、麺を食べ終えた所で妙に器の色が気になり始めた。
青磁器色にしたかったのか、不思議な色。
それは、とても美しくなかった。
愛情を受けた事がない器の色。
美味しく食べたが、少し悲しかった。
ごちそうさまと出口に向かう。
自動ドアのガラス越しに写る自分と店内。
ありがとうございますと言いながら器を下げる従業員。
その顔はこちらを見ておらず。
その様が、写っていた。
外は寒い。
冬だから当たり前なのだが、ここ数日は特に冷えてる。
足早に転ばぬように歩いた。
いつも、歩む道。
Rに。
いつものソフトブレンド。
さっきの器と似た色のカップ。
いつものカップ。
それは、キラキラキラキラ輝いていた。
僕は、今日のそのコーヒーを普段よりちょっとだけ時間をかけて、飲んだ。
ようやく、街が白くなった。
ひっきりなしに降りしきる様が、ここからでもよく見える。
春が近づくころにはうんざりしてしまう雪模様も、今日は何となくいとおしく思える。
今年も雪が降る。
幼い頃は、はしゃいだものだった。
飽かず天を仰いだ。
今日の空にそれをやると、まとまった質量でかなり顔が冷えるだろう。
でも、それが良かったのだ。
街は電飾に縁取られている。
ホワイトイルミネーション。
僕が帰る頃は、ほぼ消えている。
消えたイルミネーションに見えるものは、黒いゴムの線に捕らわれた植物だ。
この間まで街を黄色く飾っていた銀杏並木が、そうなっていた。
華やかな影にもうひとつの世界。
クリスマスに浮かれる街並み。
降りしきる雪。
そんな中、また大事な人が先に逝った。
酒と音楽を愛した人。
彼がどんな気持ちで飲み続けていたのか永久にわからなくなってしまった。
少しの後悔と多大な感謝を持ちつつ、この白い雪に彼を想う夜にしよう。
ひとり今、そう思った。
早い時間からの来客やら何やらで、バタバタバタバタした。
何とか相手をしつつの休み明けの仕込みをこなし、19時よりのバータイム、準備万全もそこから空気動かず。
全く面白いもので、本当に思う通りならない。
退屈に負け、これを開いた。
師走も静かな始まりをしてしまった。
我が店は"師が走る"くらいになるのであろうか。
全く不安である。
独立して早五年になる。
左団扇の月がないまま、赤字という十字架を大事そうに抱えている現状。
ここまでくると、本人が抜け出そうと本当に思っているかも疑問になってくる。
この店をプレオープンさせたのは、二年前の12月。
早い。
という事は、ここで三度目の冬だ。
今日の夕方、向かいのランバンさんのエントランスにイルミネーションが灯った。
いよいよクリスマスか。
対して企画もなく僕は、同じように今日を過ごしている。
